自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の治療
- Aira-Life-Coaching
- 2024年2月9日
- 読了時間: 4分
更新日:3月22日

自己愛性パーソナリティ障害(NPD)は、本来治療できる障害です。セラピーなどで、他者との関係や自分の行動を振り返り何が生きづらさの原因かを理解すること、またトラウマに起因していることが多いので、カウンセリング等自分を探る作業が有効になります。
しかしながら、NPDは本人が治療しようという気持ちになるのが難しい。
NPDの特性であるところの自己の誇大性ゆえに、自分の言動を省みたり、反省したり、自分の非を認めて謝ったり、相手と話し合って妥協点を探す、ということが非常に難しいのです。
NPDはそもそも過去のトラウマや、幼少期に何らかの理由で健全な自己愛、自己肯定感を育てきれなかった事に起因します。
赤ちゃんが育っていく重要な過程で、「誇大自己」と「親のイマーゴ(理想化)」があります。
赤ん坊の、自分は万能であると思う万能感。泣いていると保護者が問題を解決してくれる、自分は神のように万能であると言う気持ち。これが「誇大自己」です。
そして、もう一つが親が適切に自分を育ててくれている、親が神のように自分を愛して何でも満たしてくれると崇める、これが「親のイマーゴ」。
この二つのどたらも適切に満たされながらバランス良く育っていき最終的に健全な自己愛が育ちます。
しかしなんらかの理由でどちらかをバランスよく満たす事ができずに、健全な自己愛を育てる事が出来ずに自己誇大し大人になってしまう、これがNPDです。
例えば、幼少期に親からの承認が適切に満たされず、バランスを取ろうと自己を誇大しすぎてしまう。あるいは支配的な親のもとで、無力感や自己否定が強くなり、自己防衛のために自己肯定感を肥大させる。あるいは、親が過保護で子供の万能感を必要以上に高めてしまう。
又は、自己を育む過程において重要な幼少期に、なんらかの事情で親、第一保護者の引き離される経験をしており「親の理想化」の過程が上手くいかなかった、など。
色々な要因がありますが、本来の健全な自己愛の不足を、誇大自己で補おうとしているNPDの人は、自分を保つためにその特性を身につけていると言う事です。
つまり、その誇大性を覆すこと、自己を反省したり非を認めたりすることは、自分の懸命に保っている自己が崩れる事になります。
単に自分勝手な性格だから反省しない、謝らない、というのではなく、本人にとっては気がついていなくても、無意識の自己防衛と自己価値の保存のため。傷ついた自己を守ろうとしているのです。
なので、カウンセリングやセラピーに必須な、自己を振り返ったり省みたり、変わっていこうとすることを拒む事が、他の精神疾患に比べて多い。そんな事をしたら自己が壊れてしまうというディフェンスメカニズムなのです。
冒頭に申し上げた通り、自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の治療は本来可能です。適切な治療により、その誇大性を振り返って健全な自己を再構築するのが望ましい。
上記の理由によりその治療自体が難しいこと、またNPDを治療する専門のセラピストが非常に少ないことで、治療が難しいものになる事が多いのです。
では、あなたのパートナーがNPDの可能性があるとしたら、どうすれば良いのでしょうか?
次回の記事NPDとの関係の構築でお話していきます。
さらに自己愛性パーソナリティ障害のサイクルや、よく用いられる手法について詳しく知りたい方は、
をぜひお読みください。
*「NPDを精神疾患の診断・統計マニュアルにそって解説」をテーマにXスペースでお話しました。リスナー様からの質問にもお答えしています。聴いてみたい方はこちら
あなたが健やかで明るい未来へ向かいますように。
NPDサバイバー回復コーチ
堂前宏美
参考:
岡田尊司『パーソナリティ障害』PHP研究所
岡田尊司『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』 (PHP新書)
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